こんにちは。編集わっしーです。ブログでは大変ご無沙汰しております。4年ぶりの更新ですね。ベトナム語の勉強は細々と続けています。

何を書こうか悩んだのですが、韓国語の話などことばに関する内容を書くと「マニアック韓国語」と少しかぶってしまいそうなので、今回は言語の話はやめて、好きな小説の話をします。

小説はSF、ファンタジー、推理、ミステリー、ホラー、サスペンスあたりのジャンルを主に好んで読みまして、このところあまり読めていませんが最近読んで印象に残ったのは舞城王太郎の『淵の王』です。あと乱歩を少し読み始めています。

今回紹介したいのは、恒川光太郎『秋の牢獄』という短編作品です。記録を見返したところ僕がこの作品を初めて読んだのは8年前のことのようですが、当時、読み終えて不思議な余韻に浸ったのを覚えています。

この作品は、いわゆる「ループもの」です。ある日目が覚めると見覚えのある一日が始まり、違和感を覚えてよく観察すると、なんと昨日とまったく同じ一日を過ごしている。混乱しながらも一日を過ごし眠りにつくと、すべてがリセットされて同じ朝が始まる。周囲の人間はそのことに気付かず、自分だけが何回も同じ一日を繰り返し、抜け出すことができない。さて、どうしたらいいのか?

この手の物語はたくさんありますよね。大抵は謎解きなどをしてループから脱出したり、主人公の内面的な成長によってループが終わったりするのですが、この作品はそれらとちょっと違っています。

主人公は女子大学生ですが、彼女の他にもループする人たちが登場します。彼らはそれぞれループし始めた時期が異なり、ループ回数も何百回という人もいればまだ数回の人もいますが、毎日決まった時間に集まってループ仲間だけのコミュニティを作っています。物語は、主人公がこの集まりで体験する出来事として語られていきます。一日がループしているという事実は物語の根幹にずっとあるのですが、そのことはだんだん背景化して、主人公の考え方が変わっていく様子やコミュニティの人間模様が語られるようになります。

ループを脱出する方法が物語のテーマになっていないのが、よくあるループものとは少し違う点ですね。どのようにループが終わるのかは話の中で徐々に示唆されていきます。結末で大どんでん返しがあったり、衝撃のラスト!のようなことになったりはしませんが、なんとなく分かっていたことがゆっくりと語られ終わっていく様子は納得と満足感を与えてくれます。

僕がこの作品を知ったのは、角川文庫の『きみが見つける物語 休日編』という中高生向けのアンソロジーに収録されていたのを読んだときでした。中高生向けの本に採用されるところからも分かりますが、難しい言い回しとか、複雑なストーリー展開などがあまりなく、とても読みやすい文章です。

一応分類としてはホラー小説ということになるようです。確かに怪奇現象ではありますが、怖さはそんなにないですし、どちらかというと幻想小説と言ったほうがいいかもしれません。興味が湧きましたらぜひどうぞ。文庫『秋の牢獄』には他に短編2編が収録されています。こちらもいいですよ。