こんにちは、編集のわっしーです。

皆さん、方言は好きですか?
日本語と同じく韓国語にも地域ごとにいろいろな方言があって、盛り上がる話題の一つです。
方言について話す場合、その地域独自の単語に関する話になることが多いです。例えば、부추(ニラ)のことを慶尚道などの地域では정구지と言うなど。
あとは、抑揚に関してでしょうか。音の上がり下がりの違いも、分かりやすくて面白いですよね。

ですが、方言の「文法」についてはあまり話題にならない印象があります。
話をしないだけならまだしも、「文法」とは標準語にだけあるものだと思っている人が多いので、
「方言にも『文法』があるんですか!?」と驚かれることすらありますね。
文法は言葉を作り出すための仕組みですから、極端なことを言えば、
言葉を使って話をしたり文章を書いたりしている人がいればそこに「文法」はあります!

さて、今回はちょっと方言の文法について書いてみようと思います。といっても、難しい話ではありません。
皆さんもよく知っている、韓国語の-아/어形。
今回は慶尚道方言バージョンの-아/어形に関する話です。

慶尚道方言の韓国語にも-아/어形はあります。
教科書で勉強する韓国語では、-아/어形は前後をつなぐ接続形の用法と、文の最後に使うパンマル(タメ口)の用法の2種類がありますが、慶尚道方言では-아/어形を使ったタメ口の用法がないので、もっぱら前後をつなぐ用法で使われます。

基本的には標準語と同じく、語幹に-아/어を付けるので、받다であれば받아、들다であれば들어となります。簡単ですね。
ただし、標準語と違う作り方をする単語がいくつかあります。
これを覚えておくと、いろいろと応用が利きます。ここでは2個だけ挙げてみます。

①母音語幹で、語幹末の母音が이だと、-아/어形のときも이で終わる
語幹の最後が이だと、標準語では-어を付けますね。例えば내리다であれば、내리-に-어を付けて내려となります。
しかし慶尚道方言の場合、-아/어形を作った場合でも내리のままという作り方になります。
내리다と가다を接続した내려가다という単語は、慶尚道だとどうなるでしょうか?
そう、-아/어形が내리なので、つなげて내리가다となるのです。

②母音語幹で、語幹末の母音が우だと、-아/어形のときは아に変わる
세우다や배우다のように-우다で終わる単語は、標準語の-아/어形では세워、배워となります。
これが慶尚道だと、세아、배아のように-아という形になります。少し見慣れない形かもしれませんね。
「(車などに)乗せてあげようか」という意味で태아 주까(태워 줄까)と言ったりします。

方言の-아/어形の作り方を覚えると、上で見たように-아/어 주다などの表現に幅広く応用できます。
また他にも、-아/어形を応用できるものがあります。

一つ目は、-아서/어서に当たる方言形の-아가/어가という語尾。
これは標準語にもある-아/어 가지고(-아/어 갖고)という表現がさらに簡略化されて語尾になったものです。
もともと-아/어形が含まれているので、上の作り方が適用されます。
例えば、내려서は慶尚道では내리가となるわけですね。

そして二つ目は、過去形の-았/었-です。これも-아/어形を含んでいるので、応用できます。
내렸다は내맀다、배웠다は배았다ですね。
方言では正書法が決まっていないので、人によって내릿다、배앗다のように自由に書かれます。

どうでしょうか?
方言には方言ごとに、活用形の作り方という個別の文法があるというのが分かったと思います。
ドラマなどで方言に触れたとき、こうしたことをちょっと思い出してもらえたらと思います!