久しぶりに単行本を担当しました。4月1日発売の『なりきり!韓国語会話トレーニング』です。

『なりきり!韓国語会話トレーニング』

よしあしはともかく、オヤジ二人(私とデザイナー木下氏。失礼!)で作ったとは、とても思えないカバーデザインです。

最後マムリの作業で時間がなくてバタバタだったのですが、それも子どもが保育園からもらってきたコロナにやられしばらく仕事ができなかったからでした。ただし、今回話は病気のことではなく「名前」に関することです。

下の子どもが発熱したため、すぐに家族全員でPCR検査を受けにいきました。翌日検査結果がショートメールで次々送られてきて、まずは次男、次は妻、そして私の順に陽性と判明したのですが、私宛のメール文面の宛名は名字なしの「正烈様」。「なんかホストみたいだね!」と声を上げたのは私の妻でした。

私のフルネームは裵正烈ですが、この名字はパソコンや携帯でなかなか見つけられず、受信の際にはさまざまな他の難解な文字に置き換わることがあります(機種依存文字というやつです)。今回は検査時に手書きの申し込み書だったので、先方では自力で探せなかったものと思われます。

私の「裵」は、本来中国にもある「裴」が基にした韓国オリジナルの漢字と思われます。韓国の漢字姓は歴史的には中国伝来のはずですが、なぜ、そしていつから、わが一族が名字の漢字を現在のような鍋ぶたを上に移動させた形にしたのかは知りません。

一族の族譜(家系図)の説明や韓国の人名辞典によると、わが一族の始祖は高麗王朝の開国功臣の一人で、国を建てた王建から直々に姓を賜ったとされているので、王様から「卿は大きな手柄を立てたので、中国の裴とは違う裵を名乗りたまえ」ということならいいのですが……。いつか時間ができたら、きちんと調べてみようと考えています。

ともあれ、パソコンでの表示問題だけでなく、手書きでも間違えて書かれることが後を絶たないので、メールなどでは氏名の表記を最初からカタカナにしています。ところがこの韓国語読みカタカナ名にもいろんな問題があるのです。

まず、ぱっと見てきちんと発音してもらえないことが多いです。そのため病院の待合で名前を呼ばれるときなど、いつも周囲の注目を集めることになります。ウェブサイトやシステムの氏名欄で文字数オーバーですべて入力しきれないこともたまにあります。

今どき「デーブ・スペクター」「ダレノガレ明美」のような長い名前の定住者がいることは考えれば分かると思うのですが、なぜ想定していない?!

これまで受け取った私宛の書面で一番面白かったのは、「テイ・ジョン・ディオール」という宛名です。電話口で聞いたメモが原因と思われます。電話口で「ペと申します」と伝えても、相手は半濁音が聞き取れないことが多いのです。

ただし、最近は聞き取ってもらえる確率が半分以上になった気がしますし、駄目な場合も「ペ・ヨンジュンと同じぺです」と言うとすぐ分かってもらえるようになりました。

名前の話をもう少し続けると、下の名前、정렬は鼻音化が起きて発音が[정녈]になるのが正しい発音です(ただし一世の祖父や祖母などは[정열]と発音していました)。しかし、私は考えがあってハングル1字ずつの発音を反映させた「ジョンリョル」としています。上で触れた「ジョンヨル」も、本ブログの執筆者名に生かしている次第です。

この話、最近どこかで聞いたと思われる方がいるかもしれません。そう、韓国ではこのたびの大統領選挙で、윤석열氏が選ばれました。この名前をどう呼べばいいのか、韓国でも少し話題になったことがあります。本人やその周辺は석열を[성녈]と発音しているそうですが、ルール通りですと[서결]と連音化します。この問題に関しては国立国語院の院長先生が国会で質問を受けました

ルール通りだと[서결]が正しいと解答しいということになりますが、発音のルールとは別に人の名前の発音については規則がないというのが国立国語院の決まりだそうです。最初は、あわてて[성녈]と答えてしまいましたが、質疑に答えたチャン・ソヨン院長はHANAの『ソウル大のTOPIK はじめてのTOPIK II』の著者の先生です!。

日本でもこうした状況を反映してか、メディアによって二通りの読み方があったように思います。また、朝日新聞は当初発音ルール通りに「ソギョル」としていたけど、写真のようなお知らせを出して、3月11日に「ソンニョル」に改めるという「お断り」が掲載されました。

朝日新聞記事(2022年3月11日朝刊)尹錫悦の仮名表記に関して

朝日新聞記事(2022年3月11日朝刊)

ところが昨日、ツイッターを見ていたら、「윤석열陣営からの通達で今後「ソクヨル」記すことになっている」と韓国のジャーナリストの方が書いています。

これが本当かどうか未確認ですが、もうしそうするとしたら、これって1文字ずつカタカナを対応させる「ペ・ジョンリョル」方式じゃないですか!でも、それを言い始めると「あなたの名前はペ・チョンリョルにすべきではないか」と言われるかもしれません。

日々こうした「案件」を多く扱っている朝鮮日報日本語版の方式だと、윤석열は「ユン・ソクヨル」だそうです。姓・名間の発音変化は適用させず、発音を1文字カナで表示ずつ反映させるとのこと。박근혜は「パク・クンヘ」としているそうです。

国立国語院が「人の名前の発音については規則がなく、人それぞれを認める」とするのであれば、メディアとしては自前のルールを作りそれに従うのが一番シンプルでいいということになりますね。 (ジョン夜)