調子に乗って追憶の街の続き。今回は梨大駅。梨大にはちょうど1カ月だけ住んでいた。忘れもしない2001年、大雪の韓国。

当時仲良くしていたオンニが延世大学の語学堂に留学をしていたので、そのオンニの下宿に転がり込んだ。梨大のショッピングスポットど真ん中にあるビルの3階だったか、4階だったか。このとき卒業間近の高校3年生。1年間アルバイトで貯めたお金をすべてつぎ込んだ1カ月ステイは1日5,000ウォンの制限あり。

節約のために、いつも下宿の下にある포장마차<屋台>で떡볶이<トッポッキ>を食べていた。ちょっと気分が乗ると튀김<天ぷら>を追加したり、마탕<大学芋>をおやつに買ったりした。

そんな貧乏生活1カ月で私が身につけた貧乏女子学生のみに許される究極の技がある。その名も「買って買って!攻撃」。電話越しに「오빠 패 고파〜〜〜(ハート×∞)」というだけで、ソウル中のオッパがたちが駆けつけてくる(というのは嘘だけど)。「오빠」という名の手札を増やせば増やすほど、毎食おいしい韓国料理にありつけるのだ。逆に「후배<後輩>」「동생<年下>」「동갑<同じ歳>」カードはあまり歓迎しない。まあ、そんなわけで「오빠」カードを着々と増やした1カ月だった。

梨大でよく行ったのは、下宿近くの식당<食堂>。そこの아줌마は息子が俳優だとかで、行く度に息子の切り抜きを見せてくれた。この店は동태찌개<スケトウダラのチゲ>と반찬<おかず>の감자조림<じゃが芋のにっころがし>がおいしかったけど、3,500ウォン。その日の晩ご飯に「오빠」カードが使えるという確信がある日以外は行かなかった。

そうそう、「오빠」たちと言えば、신촌<新村>でお肉を食べているときに、「海が見たい!」と盛り上がって、そのまま勢いで深夜、동해<日本海>に出発した。日の出が有名な場所で写真を撮って、刺し身を食べて、氷の張った湖でさんざん走り回って帰ってきた。貧乏旅行のくせに遠出できたのは「오빠」カードのおかげだと思ってる。

そして、これはオンニと私の間で流行ったこと。
SWISS MISSのココア。東大門市場のファッションビル地下の輸入食品屋で4,000ウォンはする超高級品だった。2人で一箱買って、すごく大事に飲んだ。
コンビニで팥빙수 아이스<かき氷アイス>に딸기 우유<いちご牛乳>や바나나 우유<バナナ牛乳>をかけて食べるのも流行った。
そしてすごく流行ったのが、박지윤<パク・チユン>の「환상」という曲のモノマネ。そして임창정<イム・チャンジョン>の「나 닮은 너」もすっごく流行っていた。もちろん他にもいろいろな曲がはやっていたけれど、思い出せないのが悔しい。聞いたら思い出すんだろうなぁ。

貧乏だけれど、韓国生活を満喫した1カ月だった。

「오빠」カードだなんて書いて申し訳ないけれど、そんなオッパ達とは、10年以上たった今でも連絡を取っていて、今や「오빠」ではなく立派な「아빠<お父さん>」になっている。10年は短いようでとても長い。

ここに登場するオンニとは、ひょんなきっかけで連絡が取れなくなって久しい。もしこれを読んでいてくれたなら、連絡をください。なーんてここに書いたりして。でも本当に待ってます(笑)

次回の追憶の街は「서울대 입구<ソウル大入り口>駅」です。

(彩)