※このコーナーは、『韓国語ジャーナル hana』の定期購読者に送付されている会報誌『hana通信』の「わっしーのマニアック韓国語」を再編集したものです。

【マニアック韓国語 Vol.12】やりもらいと依頼の話

「くれる」「あげる」「もらう」など、複数人の間で物をやりとりすることを表す表現のことを、やりもらい表現といいます(授受表現ともいいます)。今回は、このやりもらい表現を使った依頼の表現についての話です。

まず、日本語の依頼表現を考えてみます。仲の良い人同士であれば、「~してくれ」や「~してください」のように、直接的な表現で依頼をすることができます。

しかし仕事の取引先などに少し硬い文章で依頼をするときは、「~してください」などの直接的な表現よりも、「~していただけますか」「~していただけると幸いです」などのように「~していただく」を使った疑問や希望の形がよく用いられます。

こうすることで、婉曲的な表現になるためです。敬語が関わると少しややこしくなりますが、「いただく」は「もらう」の謙譲語ですから、敬語を抜いて考えれば「~してもらう」の形を使っていることになります。

一方、韓国語ではこのような婉曲的な依頼表現に使われるのはもっぱら주시다です。-아/어 주실 수 있어요?や、-아/어 주시면 안 돼요?などがあります。

ところで、주시다を日本語に訳すとどうなるでしょうか? まず、尊敬の-시-が付いていない주다は「(誰かが私に)くれる」または「(私が誰かに)あげる」の2通りの訳があります。

今回の依頼表現の場合は、恩恵の受け取り人が「私」になりますから、「くれる」であると分かりますね。さらに尊敬の-시-が付くということは、目上の人が自分に「くださる」ということになります。

つまり、日本語では婉曲的な依頼に「~していただく」をよく用いており、韓国語では-아/어 주시다(~してくださる)をよく用いるということになります。

-아/어 주시다を使った依頼の表現が学習書でどのように訳されているかを見てみると、直訳に近い形を取る場合、「~してくださいますか」「~してくださらないでしょうか」など、-아/어 주시다を忠実に「~してくださる」に訳していることが多いです。

単語の対応という観点ではどうしてもこのような形になりますが、表現の翻訳という観点では、現在の日本語で主流の「~していただけますか」「~していただけないでしょうか」などの形に翻訳するのも一つの方法であると言えます。

以前は日本語でも、韓国語と同様に「~してくださる」の使用が多かったと考えられますが、現在の日本語では「~してください」など直接的な表現のみが残っており、婉曲的な表現の領域は「~していただく」が奪いつつあると見ることができるでしょう。

보내 주시면 감사하겠습니다という表現を訳すとき、あなたなら「送ってくだされば幸いです」「送っていただければ幸いです」のどちらにしますか?

今回は、どちらかというと韓国語よりも日本語の表現についての話になってしまいました。細かい部分ですが、韓国語を日本語に翻訳したり、その逆をしたりするときに、こうした微妙なずれを知っておくことは大切です。